パタゴニアのインパクトベストを使いこんでわかった数々のメリット
パタゴニアが出しているビックウェーブベスト(インパクトベスト)って知っていますか?
一般的な販売は行っていませんが、CO2の小型ボンベを使うPSIベスト(自動膨張式ベスト)もパタゴニアは独自に開発しています。
PSIベストは今の自分には必要ないので持っていませんが、画期的な製品です。
PSIベストに限らずパタゴニアのモノづくりに関しては、また改めてゆっくり書くとして、今日はビックウェーブベストなど国内で市販されている3種類のビックェーブ用ウエットスーツを実際に使い込んだ感想を含めて紹介させていただきます。
うかんでいられる
これが一番のメリットだと思います。海で何かトラブルがあって、たとえば体が自由に動かせない状況になっても水面に浮いている状態を確保できます。
大怪我して浮かんで救助を待つような状況になった事はありませんが、万が一の時に落ち着いて待てる体制を確保出来る安心感って重要ですよね。
スイミングやドルフィンも可能
ライフジャケットを着ると浮力がありすぎて泳ぐことも、サーフィン中の必須アクションである、パドリング、ドルフィンスルー、テイクオフ&ライディング、といった運動が全て出来なくなります。
ビックウェーブベストは素材も柔らかく流線的なシルエットであり、浮力も適度に調整されているので、困った時に頼りになるのにサーフィンの妨げにならない、ちょうど良いあんばいに作られています。
普通のウエットスーツと変わらない感覚でサーフィンできるも嬉しいポイントですね。
打撲ダメージも軽減
波が大きいとワイプアウトした時に体が受ける衝撃も強くなりますが、巻かれた時にサーフボードにぶつかったり、リップから水面に叩きつけれれるようなワイプアウトをしたとき、ウレタンフォームのパッドがダメージを吸収してくれます。
ショートジョンタイプは尾てい骨部分にパッドがありますが、ボトムまで持ってかれた時にぶつかる可能性の高い場所を上手にカバーしてくれています。
何にも当たりたくないですが、当たっても怪我しないですむかもしれない安心感に助けられてきました。
かと言って、浅いところで思いっきりパーリングするのは極力避けましょうね。
深くまで沈まない
これが一番実感しやすいと思います。浮力体を身にまとっているので、深くまで持っていかれず、浅いところで止まってくれます。
同じワイプアウトでも深いところまで行くのと、水面に近いところに留まっているんじゃだいぶ印象変わります。
浮上が早い
当たり前ですが、着てない時に比べて圧倒的に早く浮上できます。
深く持ってかれない+浮力による相乗効果の賜物ですね。
100%効果がある
インパクトベストはウレタンフォームという浮力体が入っています。だから、どんな時でも浮力が得られます。
PSIベストは自分で紐を正しい向きに引っ張ってはじめてエアバックにボンベからCo2ガスが注入されます。
手動エアバックみたいな装置です。
自分基準で考えた場合ですが、かなりシリアスなワイプアウトで交通事故級の衝撃を受けている最中に、的確なタイミングで紐を正確に引っ張る自信がありません。
さらにメンテナンスが不十分だったら、あるいはワイプアウトの衝撃でパーツが破損していたり、何らかの不具合があったら、エアバックが膨らまない可能性もあります。
その時に誰かを恨んでも遅いですよね。
25ft以上の本格的なビックウェーブだったら、インパクトスプリングスーツの下にPSIベストを重ね着するなどして、異次元の衝撃に備えるようですが、25ft以下だったら物理的に浮力が保障され、操作も不要なインパクトシリーズをチョイスした方が良いと開発者のアンドリューさんも言っていました。
着るの大変
インパクトシリーズのウエットスーツ、特にショートジョンタイプは着るのが大変です。
ウエットスーツの至る所に配置されたウレタンフォームと縫い目がウエットスーツのストレッチ性を下げています。
不良品じゃないか?と思うほどキツいと感じますがそれで良いのです。
簡単に着れる=簡単に脱げる
波に巻かれてウエットスーツがめくれたことは誰でもあると思いますが、シリアスな状況でウエットスーツがめくれたり、絡んだりすると状況はさらにシリアスになります。
それに比べれば、陸上でちょっと着るのに手こずるくらい何ともありませんし、使っているうちに徐々に馴染んできます。
着づらい=脱げない
シリアスな状況で頼れるのは後者ですね。
シュノーケルにも最高
番外編ですが、ダイビングマスクをつけてシュノーケルする時とか、このベストがあると疲れません。
なのでトレーニングには向きませんが、ゆっくり水中の世界を楽しむ時はこの浮力がちょうど良いですね。
注意!いつもより転がされる
ここからはいくつか個人的に思う使用上の注意についてです。
まず理解しておくべきなのが、何も着てない時より長く波に引きづられることがあると言う点です。
浮力があるぶん、転がされてしまいます。
深く沈まないし、浅いところなのでパニックになる事はありませんが、岸が岩だらけの場合は留意していくと良いと思います。
注意!重ね着の方法
ベストは重ね着に適していますが、必ずインパクトベストを内側に着て、その上にシーガルなりフルスーツなりを着てください。
順番が逆になると巻かれた時にベストだけ激しくめくれたり、脱げて無くなる可能性があります。
インサイドに閉じ込められてセットを食らっている時にベストを着直す時間は無いので、最初からめくれない状態を確保しましょう。
ちなみに、スプリングやショートジョンはめくれる事が少なく、めくれてもパドリングにさほど影響ないのでこの点では有利です。
注意!他人の視線
こういった浮力体を着ていると、他人の視線が気になります。
なぜならば相当波が大きくないと、着ていると人は少数だからです。
そんな状況で自分だけ着てたら、それだけで目立ってしまいます。
しかも良い気持ちの目立ちかたじゃないと思います。
だけど、誰にも迷惑をかけていないし、何かあった時のバックアップになることを考えれば波の大小を問わず、自分の判断で着れば良いと思います。
誰かに「何それ?」とか揶揄されたら、「これはキン肉マンスーツでパドルが早くなるんだ!」といなせば良いです。
もしかしたら笑ってくれるかも知れません。冗談は世界を救います。
重要なこと
インパクトベストは大きな波でのトラブルを回避して安全性を高めてくれる素晴らしいデバイスです。
個人的にはオーバーヘッドでもダブルでも、サイズに関係なくあなたにとってチャレンジングなコンディションだったら迷わず着れば良いと思います。
ただし、勘違いしちゃいけないのは、ベストを着れば無茶して良いってことじゃ無いです。
チャレンジする事を推奨はしますが、それはチャレンジする準備が出来ている状態に限ります。
リーシュコードよりは頼りになりますが、インパクトベストがあれば大丈夫と思ったらそれは事故の元になります。
ベストを持ってても、太いリーシュを持っていても、冷静に状況を観察して、自分なりのシナリオが出来てはじめてパドルアウト開始です。
波乗りのスキル、状況判断スキルが足りずシナリオどころじゃない場合はあきらめましょう。
Ride for tomorrow という謙虚な心構えで向き合う事が一番大切です。
体を鍛えたり、装備を整えたりしながら、ゆっくりと非日常の世界に足を踏み入れていきましょう。
時間をかけてコツコツと取り組めば誰でもダブルくらいは行けるようになります。
台風シーズンもあとわずかですが、10月はたくさん台風ができる気がします。
皆さんが良い波に乗れますように!