傑作ミッドレングス【FCD Egg & F-Rocket】
パタゴニアでサーフビジネスに携わっていた頃は当然ながら、FCDに乗る機会が多くありました。
余談ですが、FCDはパタゴニア創業者のイヴォンシュイナードさんの息子のフレッチャーさんのサーフボードブランドです。
なので、Fletcher Chouinard Designが正式名称。
パタゴニアサーフボードという名前にしないところがクールですが、その理由はまた別の機会に解説させていただきます。
FCDが展開する各サーフボードにはだいたい乗りましたが、特にEgg(HUEVO RANCHERO)とF-Rocketは国内外問わず色々な場所で乗りました。
この写真は、青森県と岩手県の県境にあるリーフブレイクで撮影してもらいました。
波のサイズは頭からダブル近いのも来る最高のコンディションでした。
ウエットスーツはR5を使用する時期です。
2ラウンド入りましたが、さらにサイズアップした3ラウンド目は体力的に不安があったので見送りました。冷たい海でのサーフィンは想像以上に消耗しますね。
さて、この日のサーフィンに選んだ相棒は、Eggで長さはたしか6’10
この写真はインドネシアのG-landのマネーツリーあたりのチューブセクション。
ローカルフォトグラファーが撮影してくれました。
波のサイズはよく分かりませんが、たぶんダブルくらいはあったと思います。
今ならもっと骨盤を進行方向に向けて、後ろ足の膝をまっすぐ落として、前足に加重しながら出口を目指せるんじゃないかと思いますが、この波は潰されました。
もう一度行ってやり直さないといけない!
もとい、こちらはF-Rocketで長さは7‘6。
EggもF-Rocketも一見するとファンボード的なアウトラインですが、二つのボードは似て非なる特徴を持っています。
アウトラインとボリューム
例えば同じ長さ(7’6)だと
Eggが幅55.5cm厚さ7.3cm
F-Rocketが幅49.5c厚さ7.6cm
が標準的なディメンションです。
エッグの方が幅が広くて丸みのあるアウトラインでセンターより少し前にワイデストポイントがあります。
ロケットはエッグよりスリムでストレートラインが長いアウトラインで、厚みがあります。
ロッカーとボトムデザイン
エッグもロケットもロッカーは決して強くありませんが、両方ともデッキよりボトムの方がロッカーがあります。
これはボトムデザインによるところが大きいです。
エッグはノーズからテールまで薄いVeeボトムなのでストリンガーの部分が一番高くレールに向かって低くなります。
当然ながら板のセンターよりノーズやテールの方がVが強い(ストリンガーからレールまでの傾斜が強い)です。
つまりVボトムによって生まれた傾斜の分が、ボトム面のロッカーに加わります。
ロケットはセンターからテールエンドに向かってVeeボトムにコンケーブ施したダブルコンケーブがしっかり入っています。
このダブルコンケーブによってテールエリアの浮力を絞りつつ、テールエンド向けてロッカーをキックさせています。
このセンターからテール周りに施された細工とクアッドフィンの組み合わせが、掘れた大きな波にフィットしてコントロールとグリップを約束してくれます。
デザインと乗り味
両方とも丸みを帯びたデザインながら、エッグの方がカーブの強いアウトラインを持ち、ロケットはスリムでストレートなアウトラインながらセンターにはしっかり厚みが残っています。
一般的に幅が広いほど安定感が出て、狭いほどスピードが出ます。
厚みがあるほど浮力が残るので、パドルスピードとテイクオフは早くなりますが、サーフボードを押さえ込むためにしっかりと加重する必要が出ます。
Veeボトムはサーフボード傾けやすく、水を適度に逃すので、引っかかる事が少なく扱いやすい反面、水が逃げる分スピードはロスしてしまいます。
シングルからのダブルコンケーブはコンケーブの中を水がまっすぐ抜けていくので、Veeに比べてスピードが出ますが、波が小さかったり弱かったりすると、本来はスピードのために施したコンケーブが逆に水を張り付けてしまい、取り回しが重く感じます。
上に書いたことをまとめると、
エッグは全体的に抑え目のロッカーでセンターより少し前に最も幅の広い場所があるカーブの強いアウトラインを持ち、ノーズからテールまで緩やかなVeeボトム。
センターより前にもボリュームがあるのでテイクオフが早く、ニュートラルポジションに乗るだけでどんどんサーフボードが前に進みます。
全体的に施されたVeeがほどよく水を逃すので、ターンのきっかけが作りやすく、際どいセクションでもレールが引っかかりにくいという特徴があります。
どんどん前に進み、曲げたいところで曲がってくれる、非常に扱いやすいやすいデザインです。
ロケットもロッカーは強くはありませんが、テールエリアはダブルコンケーブが入ったVeeボトム、アウトラインはスリムですがボディーにはしっかり厚み残してあります。
ノーズからセンターにかけて抑えめにつけられたロッカーとボディーの厚みがあるのでテイクオフが早く、シングル〜ダブルコンケーブが水を一直線に排出するので掘れたセクションでもしっかりグリップしてくれますし、細めでストレートなアウトラインとダブルコンケーブによって浮力を削ぎ落としたテールを持つので、チューブなど波の核心部でもテールが持ち上げられる事なく、出口に向かっていきます。
エッグもロケットも日常のサーフィンから海外トリップから台風のダブルオーバーヘッドでも安心して使える汎用性がある傑作ミッドレングスですが、強いて言えばどんなサーフィン、どんな波質に向いていると言えるのでしょうか?
オススメの波質とコンディション
エッグはよく走り、良く曲がります。この1本があればどんな状況でも対応出来ると言えるので、ロングボーダーのミッドレングスデビューに最適です。
勝手にどんどん走っていってくれる物体を傾けたいところで傾けながら、リラックスして楽しみたい方にも最適です。
緩斜面のロングスケートボードみたいな感じですね。
イメージ的には、ずっとサーフボードに加重し続けるというよりは、シングルフィンっぽくボトムターンでは思いっきりサーフボードを寝かせてターンしたり、ハイラインでは逆に力を抜いて惰性で走らせたりするライン取りが気持ち良いと思います。
ロングボーダーなら7‘6とか長目を選べば、ほぼ全てのコンディションで今までよりいい結果が得られると思います。
ロケットはミッドレングスでありガンでもあります。
ガンと聞くと「俺ビックウェーブ行かないし」と思う方もいると思いますが、ちょっと違います。
ガンは、チャレンジングなコンディションでもあなたが安全に楽ちんにテイクオフする機能が形になった物です。
大きな波や掘れた波で、あと1秒早くサーフボードが走り出してくれたらパーリングもしないし、だいぶ楽で安全ですよね?
ガンはそれを実現してくれる道具です。
だから本当は全ての上達を目指すサーファーに装備して欲しいクイーバーです。
話がそれましたが、ロケットもエッグ同様にテイクオフが早いです。
アウトラインがエッグよりも細いので、よりタイトな状況でもテイクオフがメイクしやすいと思います。
ノーズからテールまでしっかりコンケーブが走っているので、しっかり踏み込めば、加重が全てスピードになります。
言い方を変えると、しっかり踏まないとサーフボードが気持ちについてこないので、エッグみたいに力を抜くのではなく、常にサーフボードを押さえ込む脚力が必要とも言えます。
オンショアなど波に力が無いときは、コンケーブが抵抗になってしまう時もあります。
しかしながらあなたにとってチャレンジングなコンディションに直面した時、掘れていたり横に速かったり、チューブセクションがある波でもしっかり踏み込めば早いセクションやチューブからあなたを前方に押し出してくれます。
乗ってレールを波に入れ続けさえすれば、出口につれいってくれる高速移動装置になります。
普段のサーフィンでも気持ちよくカービングマシーンとして楽しみつつ、ここぞというときに真価を発揮する特別な一本になります。
出来れば両方欲しいところですが、リラックス派はエッグ、チャレンジャーはロケットをクイーバーに加えると良いかもしれないですね。
以上、似て非なる傑作2本についての個人的見解でした。